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「未経験から農の道へ」

卒業生インタビュー|うつくしい景観を守り、自然と共に生きる!岩国へ移住

2020年3月14日 卒業生のおたより

今回は、大手石油企業において研究者を経て管理職として国内外でご活躍ののち、早期退職後に新しいチャレンジをされた坂田修作さんをインタビュー!2019年に、神奈川県横浜市から山口県岩国市に移住され、農家民宿の継承とうつくしい景観を守る活動に取り組まれています。

 

事務局

坂田さん、ご無沙汰しております!それでは、さっそくですが、当校と坂田さんの出会いからお話伺っていきますね。坂田さんは、アグリイノベーション大学校を運営するマイファームの体験農園をご利用してくださってましたね。

実は、坂田さんが当校の説明会にいらっしゃる前日に、体験農園のアドバイザーさんから連絡がありました。「農園の利用者で、マッチョで元気な坂田さんというおっちゃんが明日学校の説明会いくからー」と笑。

体験農園の利用をはじめたのは、なにかきっかけがあったのですか?
農作業を通してもっとやりたくなった!のか、ゆくゆく移住したい上での最初の行動が体験農園だったのか、お話を聞いてみたいと思っていました!

 

坂田さん

セカンドキャリアには一次産業を、と漠然としたイメージを当時持っていました。土を使う農業はそんなにやったことがなかったので、まずは土に触れてみたいなと思ったのが理由です。他のきっかけとして、娘がハーブを栽培したいと言っていたのもありましたね。
体験農園をやって色々本を読み漁って、農業は難しいことも多々あるが、それだけにビジネスとして、やりがいとしていいんでないかい、と考えはじめました。で、農業などの一次産業を起点に田舎=中山間地域で事業ができないか、もっと学ぶ必要がある、と考え、アグリイノベーション大学校入学を決意したわけです。

 

事務局

体験農園が最初のきっかけになっていたのですね…!感慨深いお話です。

いざ、AIC入学のとき・・・坂田さんといえば、AICの伝説に残る三者面談が印象的でした笑。

坂田さんとマイファーム副社長の谷さんと奥様。結果的に、無事ご入学いただき、一緒に農業を学ぶことができてよかったです。率直に伺いたいのですが、農業を学ぶ・・・と決意された際のご家族の反応はどうでしたでしょうか。

 

坂田さん

総スカンでしたね。A I C入学で根端丸見えというか。田舎に行って農業やりたいんでしょ、馬鹿なこと考えずちゃんとサラリーマンやりなさい、というのが家族の率直な意見でしたね。A I Cへのウン十万円の投資なんてとんでもない、そんなお金はうちにない(実際子供の留学費用の関係で預金が底をついていてなかったんですが笑)と言って猛反対でしたね。
谷さん(←谷は、マイファームの副社長兼農家です)との面談では、家内を無理やり説明会のあった農大に連れてきて、80歳まで働くためのセカンドキャリアに必要なんだからとにかく話を聞いてくれ、教育訓練給付金で幾ばくかお金は戻ってくるからと、主張しました。谷さんからも、A I C―マイファームはきっちりと卒業後の事業のこともバックアップしますよ、とフォローしていただきました。結局は、両者の主張は平行線で、仕事で行くっていうなら家族としてはどうしようもない、ということになりました。

 

事務局

おぉ…。ご入学時に家族の反対がある…という声は少なくありません。入学検討されている方に、坂田さんのお話は共有できればと思っています!赤裸々に語っていただきありがとうございます。

卒業後の次のステップについてお伺いしたいです!

坂田さんは、山口岩国の自然の豊かさや人柄に惹かれたて移住を決意されたかと思いますが、質問です!

卒業生さんの多くの方が悩まれている内容のひとつに、「移住するには後戻りができないから、ものすごく迷ってします。本当にここに移住していいのか、農業できるのか、という葛藤がすごくて、なかなか決められない・・・・候補地をあげたらきりがないんです~・・・」という悩みを相談いただくことがあります。

実際に移住を決断した坂田さんに伺いたいのですが、決め手やタイミングなど、決断できたのは、どのあたりに理由があったのでしょうか。また移住などで悩んでいる方に向けて、アドバイスをいただきたいです。

 

坂田さん

山口を選んだのは、

1.首都圏、京阪神圏に近いところは本当の中山間地域と言えないのでは?山梨とか茨城とか兵庫とか。チャレンジングでないというか、首都圏の影響が少なくなってなんぼのもんだ、という感覚がありました。

2.人や土地との出会いがあったことも理由ですね。今住んでいるところのオーナー藤森さん87歳の置かれているシチュエーション、歴史、オンリーワンの立地条件、などとの出会いとも言えます。

3.自身のサラリーマン生活残り少ない55歳のポストオフ(役職定年)時期も、これまでの都会での生活でないところがセカンドキャリアには良いのではないか、と考えるシチュエーションにさせてくれました。

4.世の環境変化もあります。物質的資本主義や社会システムの限界が顕著になってきて、サラリーマン終盤の「なんかこれおかしいんじゃない?このままでいいの?」という感覚と相まって、(環境の変化が)肌身で感じられたからですね。単に本や講演他からの知識だけでなく、こりゃそのまま重厚長大大企業+都会にいるとまずいんじゃない、その方がリスク高いよ、という感覚があったのも決め手の一つです。

 

事務局

色々調べている段階で、人と人との出会いにより、新しい道が見えてきたり、自分の中のやりたいという気持ちがより芽生えることがある、ということですね!

私たち事務局は、説明会やお問合せいただくお客様からも「都会にこのままいるのはちょっと…」という声をよく伺います。特に、震災や自然災害などがあったときや、今世界的に問題になっている新型コロナウィルス等々…、これからの生き方や暮らしを別の角度から考えるきっかけになったと話される方が増えているように感じます。

ちなみに、移住後のギャップはございましたか?逆にギャップがない場合は、どのあたりまで調べて、移住に向けて何度訪問したか、など、お伺いできますと幸いです!他候補地はどのぐらい周ったかなど…

 

坂田さん

移住前と移住後のギャップは、それは生活面では無茶苦茶ありました。

私は農業に加え林業にも興味があり、また、拠点となる農家民宿「和樂の里」は山林に囲まれた山里で、林業も事業に加えたいと考えていたのですが、林業の知識も経験もほとんどありませんでした。そこで、地元の森林組合に就職しました。森林組合での作業員生活は、修行とは言え過酷な労働、安い日給、毎日死の危険と隣り合わせの作業、、、等々、上場企業でのサラリーマン生活とは比べ物にならないものでした。また、家に帰っても妻はいないので、炊事洗濯等家事は全てやらないといけません。森林組合の仕事はブラックで、朝6時に集合して夕方4時過ぎまで拘束され、それから帰ってドロまみれの体を風呂で流し、飯作って、洗濯して、というようなことをしていると、あっという間に寝る時間、明日も朝4時半起きで弁当作らなきゃ、と、都会での通勤地獄とは違った地獄でした。笑

調査に関しては、A I Cでの技術・知識・人脈習得に並行して、現地のことを四半期に一回ペースで通って行いました。農業で生計を立てるには、中山間地は米麦じゃあ厳しいな、特産品で儲かるものはないか、と調べたところ、岩国市はわさび、自然薯およびれんこん、が名産で、「和樂の里」周辺には山林や渓流があり、わさびの栽培が可能では、と考え、地元の篤農家を回って、情報を集めました。わさびは夏期の冷涼な気候が必要で、高度も300m以上のところがいいとされています。篤農家の人にも実際に現場を見ていただいてたところ、ここならいけるとの見通しをいただき、わさび栽培に取り組む計画としました。また、実際に苗を買って、山林に植えて夏を越すことができるかを確認しました。結果として、問題なく夏を乗り切ることができ、わさびは栽培可能との感触を得ました。自然薯も同じく地元の篤農家の方を頼って、栽培方法などを教えていただきました。調査項目は、観光資源があるか、等、その他いろいろありましたが、わさびと自然薯が可能というところは、中山間地域で農業で生きる道があるという希望が見えた調査結果でした。

他の候補地は、山口県内は10箇所ぐらい、その他の県、は訪問しませんでしたが、西伊豆、和歌山県、富山県なども候補には上りました。

 

事務局

赤裸々にありがとうございます!!体力面では大変だったかと思いますが、笑顔は最初にお会いしたときよりもいっそう素敵になられていると感じました!!

つらくても続けられるのは、心構えがあるからなのだと思います、ずばり「やりたいことをやる」「夢をもつ」、このタイミングはいつなんでしょう。

やりたいけど、一歩が踏み出せない方はたくさんいたり、悩んだり、できないかもとあきらめたり、そんな卒業生が少なからずいらっしゃるかもしれません。

卒業生や農業を目指す方にメッセージをいただきたいです。

 

坂田さん

定年が見えてきて焦ったのがタイミングですかね。このままサラリーマンでいいのか?65まで働いて、その後犬の散歩やジム通いやたまの旅行、など、、そんな生活がしたいのか?いつポックリ死ぬかもわからないのに、このままでいいのかという焦りが芽生えたのがそのタイミングでした。

やりたいけど、家庭もあるし、暮らしていけるかどうかわからない、拠点を移した先は全く未知の世界で本当に受け入れられてもらえるのか、承継などのリスクはないのか、、、等々、心配はつきませんでした。踏み出すかどうかは、「狂っているかどうか」だという説もあります。会社の先輩に、「お前は狂っている、でもお前らしい、お前だからできる。」と言われたのですが、狂ってるかどうかは狂人本人にはわからないので、笑、まあ、自分の気持ちと直感に忠実に動いたというしかありませんね。もちろん事業計画のもとになる情報、データが基礎になりますが。

 

事務局

「お前らしい」という言葉は、「肩のちからぬいてごらん。自分らしくで大丈夫」、そんな風に聞こえますね。なにかに違和感を感じること、その感覚は大事にしていただきたいな、といろいろなお客さまに会っていて日々感じます。

「毎日の満員電車」がつらいとか、「この仕事を一体いつまで続けるんだろう」とか。

小さな違和感から、やりたいことや、ほっと力がぬける暮らしや生き方の新しい道が見つかるような気がしております。

そして、ワクワクすることが仕事にできたり、日常にワクワクがある暮らしって、きっと楽しいですよね。

坂田さん、今、一番たのしいこと、ワクワクすることについて教えてください!

 

坂田さん

山、農地そして作物が、自分の思う方向に進んでくれることにワクワクしますね。思い通りにならない方が多いですが。笑

 

事務局

思い通りにならないのが、またおもしろくて、クリエイティブなんでしょうか。

最後に、これから農業を目指そうと思っている方が、暮らしや生き方について考えている方に一言おねがいしたします!

 

坂田さん

そうですね、

計画して旅をして見て人に会って読んで考えて書いてまた行動して・・・ということを続けていると、何かしら道が見えてくると思います。いろいろ生活は忙しいと思いますが、想像や妄想に従って行動することから道も開けてくるのかなぁと思います。

その際に必要なのはビジョンだと思います。偉そうな知ったふうなことを言いますが、なぜ?と問いかけていけば、自ずとビジョンも見えてくるでしょう。

私の場合、なぜ中山間地域だったかというと、それが日本の直面する社会課題だと思ったから。社会課題の解決に貢献することで単に世の中に役立ちたいと思うだけでなく、何か人間の奥底にあるものに動かされたい、という強い欲求もありました。お金を稼いだり、レジャーや身なりや食うためにお金を稼ぐ、宮仕えで雇用される、社会に貢献する、まぁ、それも必要だけど、あと少しの人生、死ぬまでは、突き動かされるものに頑張って従って見たいな、と思った次第です。

私の場合まだ開業をしただけで事業を立ち上げるところまで到達していませんので、これからどうなるか全く未知の世界ですが、自分の考えることの実現だけでなく、家族の幸せも勿論考えながら進み、いい方向に持っていきたいですね。

 

最後に宣伝ですが、笑、ここは類まれな自然や景観に囲まれたスゴイ、素晴らしいところです。

夕陽に染まる山々、

遠くでなる鐘の音、

うるさいほどのうぐいすの鳴き声、

朝の雲海、夜の天の川、

誰も訪れることのない滝、、

人生を見つめ直すにはもってこいの場所ですよ。ぜひ一度お越しください。

 

事務局

坂田さん、今回はインタビューのご協力ありがとうございました!

坂田さんは卒業生さんの中でも、行動力が抜群でどんどん準備と活動を進められてますが、常に模索しながら、地道な下調べを続けられていたのだと改めて知ることができました。また、移住や農業について調べることを、「旅」と表現されていることがとても印象的でした。事務局としてお会いするお客さまの中には「農業やりたい、移住したい!」と焦ってしまい、やりたりことを見つけるよりも先に、移住先を見つけて、勢いで決めて後悔した…という方も少なからずいらっしゃいます。

もちろん、時には勢いと直感が大事な時があると思います!

ただ、焦らず、ゆっくり、「旅」をするように、未来のことを考える時間が人生の一節になってもよいのではないかとも思います。

そして、坂田さんより、赤裸々につらかったことや葛藤など、お話いただき、ほかの卒業生さんも自分を重ねて読んでくださっている方がいたら幸いです。そして、このインタビュー記事がだれかの最初の1歩のきっかけになってくれたらうれしい限りです。

 

坂田修作さん

大阪市出身。大手石油企業に研究者として就職、研究から事業に携わり、米国子会社社長、グローバル事業G M等を経験しながら、グローバルなライフサイエンス系新規事業に31年間従事、ポストオフ後2年間内部統制を経験、昨年57歳で早期退職、山口県岩国市の山林に囲まれた農林業体験民宿「和樂の里」を承継すべく、地元森林組合で林業の修行中。2020年度より本格的に中山間地域でのわさび栽培などを開始予定。

少子高齢化等により荒廃する中山間地域は、気候の激甚化などと相まって災害のトリガーになり、日本古来の豊かな里山資源が失われようとしている。80歳まで生きられるとしたら、残りの人生は自然豊かな中山間地域で自然資本を有効活用するビジネスに携わりたいと考えました。現在は、森林組合に勤めながら、中山間地域で栽培可能な特産品を中量中品目栽培し、農林業体験民宿や林業などとの複業的ビジネス=百商業を立ち上げるべく準備しています。

2020年4月オープン予定

里山民宿 和樂の里
https://warakunosato.net
https://www.facebook.com/里山民宿-和樂の里-103063894630082/?modal=admin_todo_tour
(FaceBookページ近日公開)

坂田さんのインタビュー記事

https://www.ymg-uji.jp/interview/id_iwakuni_sakata.html

 

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