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「未経験から農の道へ」

地方創生を胸に宮崎でアグリビジネス開始!〜100年時代の移住のカタチ〜

2021年9月16日 卒業生のおたより

同校の卒業生同士だからこそ赤裸々に語れることがあります。
多様な農業への関わり方をする卒業生を、卒業生がインタビューするから見えてくる生の声をそのままお届けする本企画。

自分に合う農業スタイルを探すヒントになればと思います。

【今回の主役】

青野雄介(あおの ゆうすけ)
大学を卒業後、機械工具関係の専門商社に入社。AIC関西3期生として農業を学んだ後、Iターンで宮崎県小林市へ家族と移住。地域おこし協力隊を経て、仲間とともに地域商社を設立し、“地域活性が環境にとっていい循環をもたらす”の考えのもと活動を行う。

【卒業生インタビュアー】

塩見純司(しおみ あつし)
大阪生まれ。旅行代理店にて教育旅行の企画営業を担当、この頃ブームでもあったグリーンツーリズムの魅力に引き込まれる。その後、祖父の農地を継ぐべく福岡県田川地域に移住し、農村民泊事業のPMや地域商社の立ち上げに関わる他、地方創生ライターやイベントの企画運営、中高生向けツアー造成など多岐に活動を行う。

宮崎空港より高速で約1時間(むしろ鹿児島空港からの方が近かった感じではあるが)、今回の目的地は霧島連山のふもとにある宮崎県小林市。地方創生マニアの方ならご存じの“フランス語に聞こえる西諸弁”のPVが有名な場所だ。

本日お話を伺うのは、AIC関西3期卒で卒業後にここ小林市に家族でIターン移住した青野雄介さん。今や起業し株式会社の代表を務めている。そんな青野さんの今までの経歴やこれから描く将来についてお話を伺ってみた。

 

-なぜ小林への移住を決めたのか

塩見

「それではよろしくお願いします。」

青野

「はい、よろしくお願いします!」

塩見

「まずは移住することを決めた経緯について教えてください」

青野

「はい、少し遡るのですが大学卒業後に機械工具関係の専門商社に入社しました。業務内容もプロモーション、マーケティング、戦略企画、営業と一通りを経験することができた上、同僚・上司にも恵まれ会社員生活は非常に有意義で楽しかったです。実は小林市ではないですが、勤務の関係で少しだけ宮崎には住んだことがあったんですよ」

塩見

「そうだったんですね!では、宮崎県は全く見ず知らずの土地ではなかったんですね」

青野

「そうなんですけど。とは言え、その時は宮崎に移住するなんて思ってもいなかったですよ(笑) 話は戻るのですが、会社員時代から“環境”について強い関心を持ってまして、色々考えた結果、“地域活性が環境にとっていい循環をもたらす”という考えに辿り着きました。その中で将来的には地方に移住し、農業をしたり地域活性に携わる仕事をしてみたいと考えていました」

塩見

「なるほど、その想いからついに地域移住をするに至ったのですね。移住される場所やタイミング等はどのように決められたのですか?」

青野

「まず場所については実は九州の北部エリアで考えていたんです。これは妻の実家が近いことが一番の理由でした」

塩見

「そうだったんですね。でも蓋を空けてみれば宮崎県小林市に移住と、何があったのですか?(笑)」

青野

「九州北部で移住先を探している中、とある農家に話を伺いに行った際にこのようなことを言われたんです。『いきなり地域に入り込み事業(農業)をしていくのはリスクが高すぎる。せめて3年は働きながらその地域の事や、したい事業について学んだ方がいい』って」。

塩見

「これは移住において大切な視点ですよね。いきなり飛び込むのではなく、徐々にシフトしていくほうが、様々な面でリスクが減りますものね」

青野

「当時は子供が一人、そして二人目が生まれる前の大事な時期でもあったので“確かに家族に迷惑をかけることはできない”との思いも強かったです。その際に考えたのが地域おこし協力隊の制度を活用することだったんです。地域おこし協力隊は最長3年で最低限の収入を得ながら地域に入り込むことが出来ると考えました」

塩見

「なるほど、最低限でも収入が安定しているのは協力隊の制度の魅力の一つですよね」

青野

「はい、そこからは福岡県を中心に地域おこし協力隊の応募を第一に考えていたのですが、偶然出会ったのが小林市でした。合同移住相談会に参加したら、たまたま小林市のブースの職員に呼び止められたんです。少し時間があったので話を聞いてみたら、すごく魅力的でした。特に“地域おこし活動”“将来の起業に向けた活動”が1年目は7:3、2年目は5:5、3年目は3:7と徐々にシフトできることが私の考えに正に合致したのです」。

塩見

「ホント偶然なんですね。その時、小林市の職員の方が青野さんに話しかけなかったら、青野さんがお話を聞く時間がなかったら、と考えると本当に縁なのだなーって」

青野

「本当に縁だと思います。そしてそのまま小林市の地域おこし協力隊に応募し、採用が決まりました」

塩見

「急転直下とはいえ、順調に移住先が決まっていった感じですね。他に移住に関してハードルなどはありましたか?」

青野

移住に関して一番の難関は“妻の説得”でしたね(笑) 最初の方は拒んでいた妻も、話を重ねていくと徐々に地方に移住する事には何も言わなくなっていきました」

塩見

「それはやはり青野さんが熱意を持って接していたからこそ、少しずつ変わっていったのではないですか?」

青野

「いや、あきらめたんでしょうね(笑)」

 

 

-地域おこし協力隊としての喜びと苦難

地域おこし協力隊時代の仕事「こばやしマルシェ」

塩見

「それでは小林市に協力隊として着任した後のお話をお聞かせください」

青野

「はい、フリーミッション型の採用でしたので、良くも悪くも役場からは具体的な業務の指示はありませんでしたので、最初は協力隊の同期の方とずっと一緒にいましたね。そんな中に役場からある話が持ち掛けられました。『マルシェイベントをやってみないか?』って。特に断る理由もなかったですのでお受けしたのですが、後々聞いてみるとなかなかやり手が見つからず回ってきた仕事だったみたいです(笑)」

塩見

「行政あるあるですね(笑) 回り回った仕事とのことですが、実際引き受けてみていかがでしたか?」

青野

「結果、いい意味で大きなターニングポイントになりましたね。行政が主体となるイベントでしたから“商工会議所”“観光協会”をメンバーとして巻き込む必要があったのですが、実際に地域を動かす中心となっていた組織と早い段階で関係を作れたのは非常によかったです」

塩見

「確かに地方に来ると“どんな組織”があって、“どのような業務をしているか”などは活動をしていく中でカギになることが多いですもんね」

青野

「本当にその通りだと思います。その後、地域の主要な団体と連携し実行委員会を結成して、イベントの名前はシンプルに“こばやしマルシェ”にし、実行委員長を務めさせて頂きました。マルシェに出店する事業者もいわゆる“的屋”ではなく地元の事業者と決めていました」

塩見

「お、いきなりの実行委員長の大任に就くところが行動量の表れですね」

青野

「乗りかかった舟ですからね。最後までやりきろうと最初から決めてました。出店者も小林市内を中心に農家や雑貨屋、飲食店などにオファーし、2017年2月に初開催しました。約50店舗の出店者が集まり、会場は賑いました。成功と呼べるイベントにできたのではないかと思います」

塩見

「でも地方におけるイベントはここからが大事なんですよね?」

青野

「まさしくその通りです。単発なイベントは予算と一時的な行動力があればできます。大事なのは、如何に“継続できるか”なんですよね。こばやしマルシェは地域コミュニティの場を生むことが目的でしたから、継続できるかが本当の意味での成功と考えていました」

塩見

「イベントをする上で“何を目的とするか”は大事ですよね。1日のイベントで集客することがほとんどの場合で目的ではない場合が多い。継続する為に何か工夫などされましたか?」

青野

「来場者に分かりやすいように、月一回、第二日曜日を“マルシェの日”としました。また飽きられないように、音楽イベントやパンイベントなど、あの手この手とトピックを打ち立てながら実施してました。天候の影響で数回中止にはなりましたが、徐々に消費者と出店者とのいい関係性や、出店者同士のネットワークを感じることができました。集客がうまくできるか、出店者は集まるのかと常に不安やプレッシャーが背中合わせでしたが、この“こばやしマルシェ”の活動は本当に大きかったです。一緒に運営に携わった実行委員会の方々や、出店者も述べ100店舗以上を数え、このネットワークが今でも私の小林での事業の礎になってます」

塩見

「地方においてネットワークを創れるのは活動する上で大切な事ですよね。困ったときに助けてもらうこともできる。そういった意味でも小林市で今後活動する上で重要な取り組みになったイベントだったと感じます。その他には何か印象に残る活動はありましたか?」

青野

「他には有機農家さんとの取り組みも忘れられないものでした。県の六次産業化の研修で小林市の若手有機農家さんと出会ったのですが、年齢が近いこともありすぐに意気投合しました。話を伺っていくと有機農家としての課題に直面していたのです」

塩見

「宮崎県は有機農業も盛んに取り組まれていますよね。具体的にはどのような課題を抱えていたのですか?」

青野

「有機農家は少量多品目での栽培がメインとなるため、単体では販路を構築するのが非常に難しいのです。その有機農家さんはグループを形成することにより収量を担保し、販路を効率よく作ることができると考えており、私も手伝わせてもらい“Kobayashi Organic”を結成しました。私は事務局として主に情報発信や企画を行い、グループの結成から運営までに携わりました。この地域おこし協力隊の業務として行った“こばやしマルシェ”と“Kobayashi Organic”の取組は今でも事業をする上で、役に立っています」

AICで学んだからこそ生まれた有機農家との絆

 

-地域おこし協力隊から起業へ

塩見

「そして協力隊から起業への道を歩むことになりますが、どのような経緯があったのでしょうか?」

青野

「協力隊の任期は長くても3年ですので、徐々に定住するための事業を考えるようになりました。その中で2点特に考えるようになりました。一点目は“中心市街地活性化”についてです。こばやしマルシェの実施で感じたことなのですが、車社会の地方において駅前というのはそれほど利点ではないことが多いです。ただ駅前には個性の強い地元の店も多く連なっていましたし、都市部で生活をしてきた自分にとっては歩いてまわれる街に魅力を感じていました。その中で一つ拠点となる店舗を運営したいなと思い、繋がりを生むための小さな“まちライブラリーカフェ”を構想していました」。

塩見

「なるほど。都市部での生活が長かったからこその視点ですね。その地方で育った人からだとなかなか発想できないことかもしれません」

青野

「そうかもしれませんね。地元の“当たり前”を変えていくのが移住者の役割の一つだと思います。そして二点目は地域商社です。これはまさしくKobayashi Organicで取り組んでいたことをそのまま事業化しようと思いました。元々“農業をしよう”と考えることもあったのですが、小林市には魅力的でレベルの高い農家が揃ってましたので、その中で自分自身が農家になるのは小林市にとってプラスにならないと思いました。ただ、農家毎に個別で動いていた面があったので、ネットワークをつくり情報を共有したり販売する仕組みが出来ればより小林市の1次産業が飛躍できると考えました。私は前職が商社でもあったので、商社の仕組みについての知識もありました

塩見

「まさに青野さんが今まで培った知識やスキルが活かせる仕事ですね。あとはどのタイミングで事業を起こしていくのか、なにかきっかけなどはあったのですか?」

青野

「地域おこし協力隊も2年目の終わり、徐々に将来の定住に向けた取組にシフトする中でお声をかけて頂いたのです。教育委員会の事業で“交流スペースの運営”をしないかって。それはまさに構想していたまちライブラリーカフェと合致していました」。

塩見

「おぉ、すごいグッドタイミング(笑) それは青野さんが交流スペースを運営したいと発信していたのを聞きつけて声をかけて下さったのですかね?」

青野

「いや、話を聞くとほんと偶然だったみたいです(笑) 思い描いた構想とほぼ一緒だったのですが、唯一構想と異なっていたのは規模感だけでしたね。規模感は10倍くらい大きい話だった(笑)」

塩見

「そこで即決した感じですかね?」

青野

「さすがに少し迷いましたが、こんなチャンスはなかなかないと思い、決断しました。最大3年ある協力隊を1年と11カ月で退任し、運営委託を受けるために会社を立ち上げました。会社名は“BRIDGE the gap”、都市と地方の中にある固定観念から生まれるギャップ(gap)を事業を通じて埋めていきたい(bridge)との思いから名付けました」

都市と地方の中にある固定観念から生まれるギャップ(gap)を事業を通じて埋めていきたい(bridge)

 

-BRIDGE the gapの取り組み

 

ここでBRIDGE the gapの事業についてご紹介いたします(画像をクリックするとHPに移動します)。

 

≪TENAMU交流スペース(委託運営事業)≫

小林まちなか複合ビル「TENAMUビル」2階にある「TENAMU交流スペース」の運営を小林市教育員会より委託を受け行っています。

 

≪小林市コワーキングスペース「TENOSSE」(委託運営事業)≫

小林市のまちなかにある小林市コワーキングスペース「TENOSSE」の運営を小林市より委託を受け行っています。

 

≪泊まれるビストロ「BISTRO HINATA」「GUEST HOUSE HOTARU」≫

小林市の繁華街にあるゲストハウス一体型のビストロ(フレンチ居酒屋)の運営を行っています。

地域食材を使った本格フレンチ
食べた後は2階で宿泊もできる

 

 

≪HINATA DELI≫

西諸地区の生産者から仕入れたお野菜、果物や地域ブランドの加工品をオンラインストアで販売しています。

地域の新鮮なお野菜もWEBで購入可能
フレンチのテイクアウトもできるようだ

 

≪アウトドアステーションえびの(指定管理事業)≫

えびの市のアウトドア情報発信拠点「アウトドアステーションえびの」を指定管理者として運営しております。

 

≪ニシモロ産直便≫

西諸地区の生産者から仕入れたお野菜、果物や地域ブランドの加工品を飲食店へ卸しています。

 

-将来に向けて

塩見

「いよいよ起業し事業が始まったわけですが、将来に向けての展望をお聞かせください」

青野

「まず大前提ですが、地域活性だなんだと言っても民間企業であるので収益化を目指さないといけない」

塩見

「当然ではあるのですが、地方創生関連で起業する人でこの視点を置き去りにする人が意外に多い。助成金でなんとかしようと(苦笑)」

青野

「そうなんですよね。そのための取り組みとしてひとつは六次産業化の逆行パターンを作りたいと考えてます」

塩見

「六次産業化となると一次産業事業者が主体となり、加工品の製造などを行い販売まで手掛けることで収益化をしていく訳ですが、一般的な六次産業化とどこか違いがあるのでしょうか?」

青野

「BRIDGE the gapには加工品製造の施設やビストロも運営しているので調理のプロがいます。そこで生産者が手掛けた野菜などを調理していく中で、お客様から評価の高かったものを加工品として自社で製造したり、それを逆に生産者に提案していく。将来的には全ての生産者がそれぞれの強みを持った加工品を持ってるなんて夢を描いてます」

塩見

「なるほど、それが逆行パターンの真意なんですね」。

青野

「はい。あとは広域連携も今後の地域活性について重要なことだと考えてます。隣接しているえびの市のアウトドアスペースの指定管理も受けるようになりました。観光についてはまだまだ初心者ですが、間違えなく“点”ではなく“面”で受けることが必要になっていく。その為には私たちのような民間企業の人間が縦割りになりがちの行政の垣根を超えた取り組みをしていかないといけない」

塩見

「まさしくBRIDGE the gapの名の通り、地方の持つ固定概念に橋を架ける役割を担うわけですね。今後の展開を楽しみにしてます。本日はありがとうございました。」

青野

「ありがとうございました。なかなか小林市は行きにくいかもしれませんが、来て頂けますと、食べるところ、泊まるところ、遊ぶところなどご案内致します。是非機会がありましたらお越しください」

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株式会社BRIDGE the gap

公式WEBサイト https://www.bridgethegap.jp/

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